「社会保険料の引き下げ」ではなく
「健康保険料の引き下げ」と言った理由
選挙期間中、各政党が掲げる政策の中に「社会保険料の引き下げ」という主張をよく目にしました。
確かに、多くの人にとって給与明細に並ぶ社会保険料の金額は重く、家計を圧迫しているのは事実です。
でも、私はあえて「社会保険料の引き下げ」とは言いませんでした。
私が掲げたのは、あくまでも「健康保険料の引き下げ」です。
■社会保険料と一言に言っても…
実は、「社会保険料」と一括りにされている中には、さまざまな保険制度が含まれています。
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年金保険料(老後の年金を支える)
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介護保険料(高齢者や要介護者の生活を支える)
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雇用保険料(失業時の生活を支える)
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労災保険料(労働中の事故やケガに備える)
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健康保険料(医療費をカバーする)
これらをすべて一律に「引き下げよう」と言ってしまえば、私たちが将来頼るはずの制度まで削られてしまう危険があります。
特に介護や年金の分野は、むしろ財源が不足しがちで、「引き下げ」より「適切な支え」が必要な部分もあるのです。
■健康保険料には“見直しの余地”がある
一方で、私が注目したのが「健康保険料」です。
健康保険制度は、確かに国民にとって欠かせないものですが、医療現場を30年以上見てきた薬剤師としての実感があります。
その理由は、
健康保険がカバーしている中には、見直すべきムダがたくさんあるということです。
たとえば、
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同じ成分の薬が重複して処方されている
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飲みきれないほど大量に処方されている(漫然投与)
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本来不要な検査が毎回のように行われている
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美容目的のビタミン剤など、本来は保険対象外であるはずのものが保険でまかなわれている
こうした過剰医療、重複投与、漫然診療などの“医療のムダづかい”は、年間5兆円以上にものぼるともいわれています。
これは制度を守るためにも、現役世代の負担を軽くするためにも、真っ先に見直すべき部分です。
■健康保険料が下がれば、介護保険料も下がる
そしてもう一つ、大事な視点があります。
それは、医療費が削減されて健康保険料が下がれば、自ずと介護保険料の負担も軽くなるということです。
医療と介護は密接に関係しています。
病院での長期入院が減り、生活習慣病が予防され、自立支援が進めば、介護が必要になる人は確実に減っていきます。
また、医療費全体が抑制されれば、社会保険財政に余裕が生まれ、介護保険制度の持続性も向上します。
つまり、健康保険のムダを省くことは、介護保険料の適正化につながる道でもあるのです。
■「健康保険料の引き下げ」は実現可能な改革
私が掲げた「健康保険料の引き下げ」は、単なる耳あたりのいいスローガンではありません。
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医療の無駄を減らす
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薬や検査の必要性をきちんと説明する
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医療機関と薬局の“過剰な処方”に歯止めをかける
こうした改革を通じて、保険料を下げながら、医療の質も高めることは十分に可能です。
そしてその先に、介護保険制度の安定と将来世代への安心も見えてくるのです。
現場を知らずに「社会保険料を下げます」と叫ぶ政治家より、
現場を見てきたからこそ、「どこを見直せば、誰の負担を減らせるか」を具体的に提案できます。
私は、守るべき制度は守り、見直すべき部分はしっかり見直す。
そのうえで、未来につながる改革を、着実に進めていく姿勢をこれからも貫いていきます。
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